評価:18/100
ネタバレちょっと含む感想。
一言いえば、思ったより淡々としていて盛り上がるところもさしてなく、長くて、鬱じゃない。
字幕版。
鬱映画として有名な作品。
まあ江戸川乱歩の『芋虫』みたいなもんか(読んだことはないけどふわっとは知ってる)、と思ったらそれよりもハードである。
『芋虫』の主人公は両手足が無く、味覚も聴覚もなく、視覚と触覚のみという状態である。
ジョニーの場合は視覚すらも奪われているのだ。
『芋虫』の主人公がどのようにコミュニケーションを図っているかは知らないが(いつか読む予定なのでネタバレは余り踏みたくない)、少なくとも窓の外の景色を見たり、世話をしてくれる人の顔を見たり、時には本を見せてくれることもあるかもしれない。
しかしジョニーは触覚のみなのだ。なにせ目もないどころか顎も舌も歯もないのである。
ただ、状態として心身ともにキツいのは確かなのだが、そこまで悲壮感がない。
大の方は人工肛門だが小の方はどうしているのかわからないし、こんな四角い箱の覆いを顔に着けたまま床ずれが起きないように寝方を変えたりできるのかなぁとかちょっと気になる。床ずれヤバそうだけど、そこは大丈夫なんだろうか。
幻肢痛もなさそうで、痛みの描写は目覚めた時や抜糸する時の三、四回くらい、後は痛みの描写がない。
なにもできず参ったのか支離滅裂な妄想が段々繰り広げられて行くが、苦しくてつらくて早く殺して欲しいと発狂寸前に度々なることもない。
思ったよりは落ち着いているのだ。
そりゃあの状態じゃあ自殺を図るのも無理だろうが……うーん、身体は固定されているのかな……?
首は動かせるけど……。固定されてなきゃベッドを転げ回ることもできそうだが……。
やさしい看護師さんがいることも一応希望ではある。あの後担当外されそうだけど……。
最後もまあ、なにもしてくれなさそうだけどまだ希望はある……あるのかな……?
みたいな感じ。
ジョニーがおかしくなって行く、という描写であろうがしばしば妄想なのか過去なのかよくわからんものを見せられて混乱するのもちょっとな……。
あのキリストなんなん。妄想の神だろうけど……。キリスト初登場のところとか過去なのか妄想なのか最初わからんかったよ。
それに妄想パートが多過ぎる。ニ十分くらい削れただろこれ。
ただただ長いだけだった。ストーリーがなにも進まない。
ジョニーにそこまで感情移入できなかったのは残念なところ。
もっと、ジョニーはいいヤツで、だけどこんなことになってめちゃくちゃ苦しんでて、家族は心配していて……みたいにのめり込めるよう描写されていればもっと鬱になれただろうに。
反戦映画として作られたもので、確かにこんな風にはなりたくない、と思うものの、どうも淡々とし過ぎていていまいち伝わらない気がする。
パッケージにあるVサインはどういう意味なんだろうか。単なるピースなんかな?
観る前は「いやピースじゃねーんだわ!!」ってなったけど今見るとそこまでの衝撃はない……。
通訳の人がつらそうでよかったな。やさしい人なんだろうね。あの看護師さんと婦長も。
生かすのを決めたお偉いさんは真っ先に部屋を出て行ったけど、あれは逃げだよなあ。
自分が意思なんかないと思ってあの状態で研究材料として生かしていたのに実は意思があって……というのが判明してつらくなったんだろうけど、お前が決めたことだろ。
あの大尉? はねぇ、どうすんのかねえ……ちゃんとジョニーを救ってくれればいいけど、そうしてくれるのかどうか……。
なんでもする、っていった割になんでもしてくれないじゃん……軍の面子を気にするならいっそ殺してくれよ…………。
盛り上がりもなく、感情移入もできず、長いだけ……という風に残念な感じであった。
『時から君を守る』みたいな台詞はよかったけどね。
……ジョニーはその後どうなったのかなあ。