くろめの記録置き場

ドラマや映画の感想等の備忘録。(あくまで個人の感想です)

甲田学人『ほうかごがかり』感想

Amazonに載せたのと同じ内容です(多分未だ反映されていないけど)。

 

 

簡潔めの感想。
・全体的に、面白いがちょっとずつ物足りない(前半の淡々としたストーリー、七不思議の考察、そこまでグロく痛々しくない文章)。
読む価値はあるといえるが、もっとガッツリきて欲しい。
つまらなくはないので読んで欲しい。
・前半二話が淡々としている。だからこそ三話目が引き立つのだろうし決して面白くないわけではないが、前半で「もういいや」ってなる人もいそうではある(自分のKindleの設定だと167/337Pなので……)。
三話までは読んで欲しい。
・最後まで読むと表紙や冒頭カラーイラストの意味がわかるのでそこはとてもいい。
・『断章のグリム』のような考察パートは少ないのでそこを期待するとちょっと物足りない。
・登場人物の心理描写がしっかりしていていい。
・『断章のグリム』と比べてグロさ、文章から伝わる恐怖や痛々しさが足りない。
殆ど三話のあそこくらい。
甲田学人先生ならもっとイケる。もっと文章で殴ってくれ。もっと悪夢を見せてくれ。


つらつら書いた感想。
正確に測っていないけど、多分そんなに読むの早くない人でも三時間~四時間で読めるんじゃないかな?
電撃文庫では五年振りの甲田学人先生の新作!!
甲田学人先生の作品は『断章のグリム』『夜魔』『霊感少女は箱の中』シリーズを読んだことがあります。
一番好きなのが『断章のグリム』で主にそれで甲田学人先生のファンなので『断章のグリム』と少し比較して(別所でのレビューを見ると『Missing』と関係があるっぽいですがそちらは読んでいないのでなんとも……でも読んでいると一層楽しめると思いますので、『Missing』にも興味ある方はそちらを先に読んだ方がいいかもしれません)。
本作『ほうかごがかり』は上記三作品の中では『断章のグリム』に近いですね。

学校に七不思議があり、それぞれ一人ずつがそれを担当し、観察と記録をする。そうすることで七不思議の被害を抑えることができる。
七不思議は童話や昔ながらの四谷怪談みたいなものではなく、〝トイレの花子さん〟〝赤いマント〟のような都市伝説みたいなものではありますが、『断章のグリム』のような考察も少しあります。
但し、『断章のグリム』は人魚姫なら人魚姫だけで一巻分、または上下巻分考察する話になっており、最初に考察し、事件が進む内にまた考えて考え方を変え、終盤真実が明らかになる……という感じだったのですが、今作では一巻に二つ分の七不思議が含まれており、一巻というのもあって設定の説明も多く、また神狩屋さんのように知識が豊富なキャラは基本同じ部屋にずーっといる上主人公達に積極的に関わる気もないし話したがりでもないので考察は少ない気がします。

どちらかといえば、一巻でメインとなった登場人物の心理描写が多いかな?
その心理描写もしっかりしていて理解できるので面白かったですけどね!
啓の気持ちもわかるけど最後はマジかよってなったし、惺は善良だけど本気でそれならおかしいし、真絢の心理描写も細かくてあの武器を取り出した辺りのくだりもよかったですね。

個人的には『断章のグリム』の神狩屋さんと蒼衣の濃厚な童話考察パートが面白くて好きだったので(勿論ストーリーやキャラ、展開も面白くて好きですが)、そこはちょっと物足りないです。
成程ねえ、となったのは啓が担当する『まっかっかさん』の正体がわかった時の太郎さんのコメントかなあ。
まあ都市伝説って最近できたものですし、寓話程意味やシンボルは込められていなさそうですが……。
何故小学校なのか、という説明も成程な、と。えらいこっちゃやで……。

キャラは若干神狩屋さんぽいなあとか、雪乃っぽいなあとかいたりする。
そしてメインキャラは「お前おかしいよ……」みたいな部分がある。そういうとこ好きですけどね!
かなしいなあ。

三話は特に面白く引き込まれました!!!
やっぱり甲田学人先生はああいう話がうまいですね。嫌過ぎる……。
なんていうか、狂う過程の心理が理解できちゃうのが、「いやそれはそうだけどでもさぁ!!」ってなるのが好きで、嫌です……。
読んだ後に表紙の意味がわかって「うわぁ……」となりました。うわぁ……どうして……どうしてそういうことをする……。
二話→三話と三話の構成というか、持って行き方がえげつない……そんなさ、後から描写されてもさ、もうさ、取り返しがつかないんだよ……。
冒頭のカラーイラストも該当箇所を読んだ後に見返すと、まあ……。
そういうの、大好きですけども!! えげつないわぁ……。
生まれたての七不思議はそこまで脅威を感じないから余計に……。
表紙や冒頭のカラーイラストは読む前にじっくり見ない方が楽しめると思います(登場人物のページは文章だけだとイメージし辛いので見るべきですが)。
あれ? でもそうなると二巻以降の表紙って…………。

正直あらすじを読んだ時あんまりピンときてなかったんですけど、「甲田学人先生だからな……」と思って読んでみたらやっぱり面白かったのでよかったです。
「面白ええええええ!!」ってテンションが上がって頁を爆速で捲るようなものではないけど、じわじわと確実にある面白さ。地面をその場で踏んで確かめて、確かに硬い地面がある、そんな面白さ。
前半は淡々としていましたが、二話の最後から面白くなって行ってよかったです。

でも今回はそんなにグロくないかな。前半が淡々としていたのもありましたが。
甲田学人先生ならもっと文章で殴れるのでもっと殴って欲しい気持ちがあります。実質グロやホラーは三話のあそこくらいだし……。

全体としては若干の物足りなさがないではなかったけど、これから『ほうかごがかり』がどうなって行くのが、誰が生き残れるのか(今のところ活躍している三名+一名には生きてて欲しいが……甲田学人先生だからこの中でも絶対二人くらいは死ぬよね……)、気になりますし、甲田学人先生の応援もしたいので次巻も買います。
一巻最後でなかなかぶっこんできて続きが気になるからWeb連載も読みます。

ただ、『断章のグリム』みたいに他人に「布教したい!! 皆読んで!! めちゃくちゃいいから!!」というレベルではないかな……未だ小学生ばかりなので(先生はわからないけど)神狩屋さんみたいな過去のバックストーリーというかド重い人間関係もそこまでなさそうだし……多分……。
いや皆結構暗いものを持ってはいるんですけど……登場人物が小学生だけっていうのが話の広がりを狭めないかな、大丈夫かな?
二巻三巻からはもっとガッツリきて欲しいですね。今後に期待。

久し振りに甲田学人先生の新作が読めてよかったです。
甲田学人先生と、おそらくは一般受けしないであろうホラーライトノベルをこうして出してくださる出版社様、ありがとうございます。