くろめの記録置き場

ドラマや映画の感想等の備忘録。(あくまで個人の感想です)

『殺戮にいたる病』感想。

『新装版 殺戮にいたる病』

作者:我孫子武丸

出版社講談社

 

個人的評価:10/100

 

 

あらすじ程度のネタバレ(大体どんな話か)を含む感想。

 

いやあ、これを読む前は期待したものです。

『殺戮にいたる病』は有名ですし類似したタイトルは沢山あるので、どんなにか面白いのだろう、と。

例えばフリーゲームの『死に至る病

www.freem.ne.jp

なんかが個人的には浮かびます。

他にも映画で『死刑にいたる病』などあるそうで。

まあ、タイトルの元ネタは聖書の『ヨハネによる福音書』第11章4節から・キルケゴールが著書に『死に至る病』と名付け→我孫子武丸さんが著書に『殺戮にいたる病』と名付けたようですが。

 

すごいぞすごいぞと噂の小説、読んでみたわけですが……。

 

なんつーか…………ひたすら変態殺人鬼の殺人シーンとセックス(オナニー)シーンを四時間十五分近く長々と見せつけられた挙句「だからなに?」というオチだった、って感じで…………。

時間の無駄、といいたくなるようなものだったな正直…………。

半分くらいに短くできたと思うよこれ。殺人(セックス・オナニー)シーン長々と何回も書き過ぎ。

稔パートくる度に「またかよ……」ってなったし。

まあ発想のえげつなさとかはなかなかなんですけどね……。

PixivでならR-18設定にしちゃうような内容なんだけど、こういうのって別にいいのかな。

一次創作ならいいのかなあ……?

キルケゴールの引用? もちょくちょく入るんだけどなんの意味があるんだこれ。

特にストーリーに関わるでもなく……。

 

登場人物もまともな奴がほぼいない。

稔はいわずもがな犯人(冒頭で判明しているしなんなら帯にも書いてあったことがあったそうなので、ネタバレの域ではない)で女を殺しまくるやべーヤツなのですが、母親の雅子も息子の部屋を毎日のように漁りエロ本のチェックゴミ箱のチェックをしてマスターベーションの回数すらも把握しています。なんだこいつ。

そして被害者の敏子の妹・かおるですが、姉を殺した犯人を捕まえるため己の身を危険に晒す勇気ある女……かと思えばですね、コイツも大分最悪なんですよね。姉がかわいそう。

樋口はマシですが、「?」と思うところはある。でもまあメインの中では一番マシ。

新聞記者は性格が悪いし……教授もまあうん。

まともなのって樋口、敏子、愛、野本、後あの人くらいじゃないでしょうか。

好きになれるような登場人物はおらず感情移入できないから、叙述トリックされても、うん、「だからなに?」っていう……。

 

例えば大長編ドラえもんで初登場のオリキャラがいたとしてですよ。

「そいつが犯人だ!」と思っていたのに「実はのび太が犯人でした!」ってなったらそりゃ「ええっ、あののび太くんが!?」ってなりますけどね。

だって俺達はのび太の怖がりでやさしい性格を知っているし、なによりのび太に好意を抱いているわけですから。

感情移入できないような人物ばかりで叙述トリックをされてもなあ……。

 

いやでも『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』の叙述トリックは「ええー!」ってなったんですよね。特にみーくんもまーちゃんも好きってわけではないんですけども。あれは意外でした。となると感情移入の問題ではないのかなぁ……?

まあとにかく、『殺戮にいたる病』に関しては明かされたところで「だからなに?」ってなりましたね……。

後フリーターへの偏見が凄い。フリーターに恨みでもあるのか作者は。

 

Kindleで読了時間:四時間十五分かかるっていわれて、稔パートにうんざりしながら、雅子パート気持ち悪いと思いながら、かおるや記者達にもうんざりしながら頑張って読み進めてあれですからね。

なんかもう、ほんと半分とか三分の二にはできただろうって気持ちが強く。

ところどころいい描写はありましたけど、そこまで得られるものはなかったかな……。

とはいえ自分は終盤の野本が出てきて云々近くまで違和感を覚えなかったので(鋭い人はいくつかのところでわかったようですが)そういうところは我孫子先生凄いんじゃないかな、と思います。叙述トリックの参考にできそうではある。

ただまあもう読まなくてもいいかな…………。

 

 

 

以下、ネタバレありの感想。

 

 

 

 

いやそれはちょっと無理ないか?

と、思ったり。

年下が大学生を「オジン」っていったりするのも有り得なくないし、休講すればいいも大学生が「自主休講」という意味でいったりするのでその辺は別に引っかからなかったんですけども(気付く人もいたようだが)。

でも四十三歳のおじさんなら大学生やら大学院生やらを名乗るのは無理があるだろ(そりゃ大学には社会人枠があるわけだけど、そういう話ではなく)。

三十歳くらいならわかるけどさ……四十三は流石に無理があるだろ。

何故四十三歳のおじさんに若い女達がホイホイついて行くのかもわからない。特にえりか。それもうパパ活とかそういうのやん。

佐智子もおかしいとは思わなかったのだろうか。大学の食堂で明らかなおじさんだぜ?

職員か教授か講師か、その辺りの人と行っちゃうわけ……?

周りもわからんのかな、蒲生先生って。大学の食堂だよ?

雅子パートで童顔描写でもあれば……いやでもそれでもなあ……ってところではあるんですけども。

 

後かおる。お前最悪や。復讐を誓う普通のキャラかと思ったら姉のものなんでもかんでも奪いたくなる妹って。病気よもう。治療して。マジで敏子かわいそう。

いわなくてもいいのに「まだあの癖直ってないみたい」とかいって樋口さんのこと奪いたーいアピールしてくるしなんだコイツ。

無惨に殺された姉を尚もいじめようというのか。樋口さんに手ぇ出そうとすな。

散々なにからなにまで、それこそ夫まで奪って今まで罪悪感抱かなかったのも怖えーよ。姉のもの奪っといて「つまらないもの」とかいってるし……夫奪っといて「元通りになってくれたらいいのに」「またいい人を見つけて再婚してくれればいい」とかいいながら誰か好きな人ができたことに気付いた時は「何とか聞き出し」て樋口さんを知って……で、また奪いたくなっている、と。

いやほんとコイツ最悪。普通に殺された方がよかったのではコイツ。

樋口さんのメンタルヤバくなるから死んだら死んだで困るんだけども。

もしこの後樋口さんと仲良くなったら嫌っすね…………。

なんで普通に姉を慕う妹じゃなくてそんなクソ設定にしたのだろうか。

登場人物を余り嫌いになりたくはないのだけれど。

要らない設定だったと思うよあれ。姉の復讐をしたい健気な妹でよかったと思うよ……。

 

樋口は樋口であの妄想だか夢だかで女を犯しながら殺す、ってのが出てきちゃうのがよくわからない。なんでそんな描写入れた?

誰もが殺人鬼になる可能性があるって?

いやあ……別に要らなかったと思うね。あれでちょっと樋口さんに「えぇ……」って思ったし。普通に好きにならせてくれよ登場人物。

 

後記者は一番最後の肝心な時に活躍しなかったのでなんだったのかっていう。

ムカつくけど味方になる時「おっ」って思ったのにな。あんま意味無かったな。

最後いさせてやれよ。小説的にわちゃわちゃするから省いたんだろうけど……。

樋口さん達三人いなくても別にいいっちゃいいんだよなこれ…………だって稔のストーリーにほぼ関わってないし……大して影響与えてないし…………。

 

稔が急に殺人を始めたのは何故だろう。

それまでよく普通に生活できたねぇ……子どもも二人いるし…………。

 

信一の部屋にビニール袋があったのは信一が稔を怪しんで、ビデオテープなんかも同様なんだろうけど……うーん、お出かけの頻度もマスターベーションがうんちゃらもお父さんの調査に忙しくて……って感じなんかな?

でもなにをきっかけに疑いを持ったのだろうか。

ちょっと行動が一致し過ぎじゃないのか。特に最初の方から丁度いなかったりしたわけで。雅子が勘違いするレベルだし。

それにしても肉塊が入った、いや血だけだっけ? ああいうビニール袋を自分の部屋のゴミ箱に入れる信一がよくわからない。

保存する心算じゃないならそれこそ庭に埋めた方がマシな気がするが(骨は無さそうだし)。

証拠として保存したいわけでも、証拠の隠滅をしたかったわけでもなさそう。謎。

ゴミに出した方が燃やされていいと思ったのか???

 

冷え切った膣とか身体とかそういう描写あったけど、殺した直後じゃそんなすぐに冷たくならんじゃろ……常温くらいだと思うよ…………。

涼しいところに数時間置いたりしたら冷たくもなるだろうけどさ……。

乳房を時々掘り出して愛したってあるけど、いや無理でしょすぐに腐ると思うけどなあ……寒い時期ではあるけどさあ……。

 

『女は下等な生き物だから、本能的に彼が普通の男達とは違うことを見抜いてしまうのだ』

ってよくわからないんだけど。聡いならともかく下等な生き物だから見抜く?

本能が強いってこと?

 

 

この話は雅子の息子が犯人かと思ったら雅子の夫が犯人でしたーってオチだったわけだけども。

だから何? っていう…………。

だって信一名前明かされてなかったしほぼ出てきてないし……。

最後乗り込んでくるところはカッコ良かったしかわいそうだったけど、でも信一事態に感情移入する余地はそれまでないから、うん、実は息子じゃなく夫が犯人でしたーってなっても、うん、だからなに…………。

 

ほんと、ずーっと気持ち悪い殺人・セックス・オナニーシーン散々見せられてこれだからもう……時間の無駄…………。

なんでこの小説がここまで絶賛され人気なのかわからない。

我孫子武丸先生の代表作なのか。

叙述トリックの傑作だのこれを読まなければミステリーを語れないだのとまでいわれるのか。

いやそりゃすごいと思わなくはないけど。

俺には合わなかったな…………。